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福岡高等裁判所 昭和34年(ネ)52号 判決 1961年3月30日

被控訴人 長崎相互銀行

理由

証拠を総合すると、被控訴人は昭和二七年一月三一日訴外組合との間に同組合の営業全部を譲り受け契約を取り極め、これに基き被控訴人及び訴外組合はそれぞれ株主総会、組合総会を開催して事業の譲受・譲渡を議決し、訴外組合はその定款所定の公告新聞である熊本日日新聞(昭和二七年五月一二日発行のもの)に、同日附で同組合の事業全部を被控訴人に譲渡した旨の公告をなし(当時の前同法第三三条第一項第一二号、第六七条参照)、一方被控訴人は、昭和二七年七月一日相互銀行法第一五条第二項の規定により右事業全部の譲受につき大蔵大臣の認可を受け、同年七月三一日までには事業全部の譲渡手続が完了し、本訴請求の金員(元金及び遅延損害金)も当然被控訴人に譲渡されたことが認定され、これに反する証拠はない。そして訴外組合が主債務者木村迪に対し本件債権譲渡の通知をなしたと推認されることは、原判決説示のとおりであるばかりでなく、訴外組合が前認定のように事業全部を譲渡した旨公告した以上、同組合は主債務者木村迪に対し昭和二七年五月一二日の確定日附ある証書をもつて債権譲渡の通知をしたものとみなされるし、また営業譲渡にともなう債権譲渡の通知が大蔵大臣の認可前になされたのであつても、相互銀行法第一五条第二項の大蔵大臣の認可は、同条第一項の認可と異なり相互銀行が信用組合(信用協同組合)の事業全部を譲り受けることの有効要件ではないと解すべきであるので、本訴請求債権について債権譲渡の通知がなされたという法律上の効果の生じたことは否定さるべくもないので、控訴人のこれに反する主張は採用に値しない。

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